マインドフルネスが脳に作用するメカニズムは?|研究報告をもとに効果を解説!

「マインドフルネスが脳に良いって本当?」
「マインドフルネスにはどんな効果があるの?」
といった疑問をお持ちではありませんか。マインドフルネスを実践すると、脳疲労を軽減できるため、仕事やスポーツのパフォーマンス向上に役立つとも言われています。
そのため、実際に社員研修として取り入れている企業もあるのです。しかし、科学的な裏付けが進む中で、マインドフルネスの効果には限界があるとも言われています。
本記事では、マインドフルネスの効果を科学的な視点から解説。正しいやり方についてもお伝えします。マインドフルネスには本当はどれくらい効果があるのかを知りたい人は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
マインドフルネス瞑想法が脳に作用する仕組み
マインドフルネスを実践すると、脳疲労を軽減させられると言われています。
脳が疲労すると、自律神経が乱れたり、集中力や思考力がなくなったりして、仕事やスポーツのパフォーマンスを低下させてしまいます。
そのため、仕事やスポーツで成果を出したい人には、マインドフルネスの実践は役立つことでしょう。ここでは、マインドフルネス瞑想法が脳に作用する仕組みについて解説します。
マインドフルネスは雑念から集中への切替スイッチ
マインドフルネスは脳が雑念モードにある状態から、集中モードへと切替えるためのスイッチです。
脳に雑念があったり、創造的な思考をしている間はDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)と言われる神経ネットワークが働いています。このときは、いろいろなことが頭に浮かび、脳は雑念モードにあると言えます。
一方で、現在の起こっている出来事や感覚に集中しているときは、CEN(セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク)という神経ネットワークが機能しています。このときは、今に意識が集中している集中モードだと言えます。
さらに、脳の神経ネットワークにはSN(セイリエンス・ネットワーク)と言われるものもあります。SNは、DMNとCENの中間となるような神経ネットワークで、この部分がマインドフルネスの状態だと考えられています。
つまり、雑念モードのDMNと集中モードのCENを切り替える役割を果たすのが、マインドフルネス状態で働く神経ネットワークSNだということになります。
その中でも、DMN側からCEN側へと切替える取り組みがマインドフルネス瞑想法です。(注1)(注2)
瞑想については、次の記事も参考にしてください。
関連記事:デフォルトモードネットワーク(DMN)で脳が疲労する?瞑想法やメカニズムを解説
DMNの活動を抑えて脳疲労を軽減
マインドフルネス瞑想でDMNから、CENに切り替えると、脳疲労を軽減させることができます。
なぜなら、雑念や創造的な思考を生み出すDMNは、自動で働く神経ネットワークであるのに加え、脳の全消費エネルギーの内の60~80%を占めるからです。(注3)つまり、DMNは脳疲労の大きな要因となってしまうのです。
そこでマインドフルネス瞑想を実践して、DMNを抑えてCENの機能を高めると、脳疲労を軽減させられるのです。実際に、マインドフルネスが脳疲労に効果があったという科学的研究もあります。
次に、マインドフルネスに関する脳科学研究について紹介します。
マインドフルネスの効果は脳科学で証明済み
ここでは、マインドフルネスの効果が証明された調査報告や研究をご紹介します。
感情的疲労の症状が25%改善
ニューヨークの医師マイケル・クラスナーが2009年に報告した内容によると、70人の医師がマインドフルネスを実践したところ、感情的疲労による症状が25%改善されたことが示唆されました。
感情的に疲労すると、燃え尽き感や極度の疲労感が現れます。つまり、医師の職責で生じる心理的負担による疲労感が、マインドフルネスによって改善されたと考えられます。(注3)
脳の機能が高まり老化による脳の萎縮にも効果あり
マサチューセッツ工科大学のジョン・カバット=ジンが2005年と2011年に行った研究による有効性の報告もあります。
それによると、マインドフルネス・ストレス低減法を8週間実践した人は、大脳皮質の厚さが増して脳の機能が高まったそうです。さらに、老化による脳の萎縮にも効果があったことも報告されています。
他にもマインドフルネスが脳疲労を改善させたり、脳機能を高めたりしたとする研究や報告は多く存在ます。しかし、マインドフルネスには効果がないと言われることもあるのです。
次に、マインドフルネスに効果がないと言われる理由をお伝えします。
マインドフルネス瞑想に効果がないと言われる理由は?
マインドフルネスに効果がないと言われるのは、次の理由からだと考えられます。
- 効果が過大に評価されているから
- マインドフルネスが状況や環境を変えるわけではないから
- やり方が間違っているから
それぞれについて詳しく解説します。
効果が過大に評価されているから
マインドフルネスは効果があるのは間違いないのですが、誇大広告により過大に評価されてしまった分、その期待を裏切ってしまい効果がないと言われることがあります。
また、マインドフルネスの定義が一貫していないため、研究においても明確な結果が得られず、そのことがマインドフルネスの効果の過大評価につながっているとも言われています。(注4)
マインドフルネスが状況や環境を変えるわけではないから
マインドフルネス瞑想を実践すると、自分の感情を客観視したり、DMNを止めることで不安や悩みから一時的に解放されたりします。とはいえ、現実の人間関係や経済上の問題、仕事の忙しさなどが変わるわけではありません。
そのため、マインドフルネスをしても、根本的な原因を解決できるわけではないことは知っておく必要があるでしょう。(注5)
やり方が間違っているから
マインドフルネス瞑想のやり方自体を間違えていることも、効果を実感できない理由として考えられます。
たとえば、瞑想中にただぼーっとしているだけでは、マインドフルネス瞑想にはなりません。ぼーっとしているときにも、人間は無意識に何かしらの思考や妄想をしていると言われています。
そのため、マインドフルネス瞑想はその思考や妄想をしている自分に気づき、呼吸やその他の現在の感覚に意識を集中させる必要があるのです。
次に、マインドフルネス瞑想の正しい実践方法を紹介しますので、正しく実践できているかどうかを、チェックしてみてください。
マインドフルネス瞑想の正しい実践方法
ここでは、呼吸に意識を集中するマインドフルネス瞑想をご紹介します。
背筋を伸ばして座る
背筋を伸ばして、骨盤を立てて座り、軽く目を閉じてください。
床もしくは椅子に座りましょう。下腹に少し力を入れて、肩や腕の筋肉は脱力してください。
呼吸に意識を向ける
呼吸に意識を向ける際は、鼻を空気が通る感覚や空気が喉にあたる感覚、肺が膨らむ感覚を感じるようにするとよいでしょう。
今の自分の感覚に意識を向けるようにします。
雑念が浮かんだら意識を呼吸に戻す
はじめは呼吸に意識を集中できますが、しばらく経つと頭の中で空想したり、考えたりして雑念が浮かびます。
雑念が浮かんだら、そのことを認識して、呼吸に意識を戻してください。途中で、何回も雑念が浮かんだ場合も、そのたびに呼吸に意識を戻すようにします。
マインドフルネスで脳疲労を回復しよう
マインドフルネスは、雑念から集中へと脳の神経ネットワークを切り替えるためのスイッチです。
マインドフルネスを実践すると、脳疲労を軽減できると言われています。実際に、マインドフルネスで感情的な疲労や脳の老化が改善だ着たとする調査や研究の報告もあります。
とはいえ、マインドフルネスは万能ではなく、その効果には限界があることも知っておく必要があるでしょう。
この記事では、正しいマインドフルネスの方法もご紹介しましたので、脳疲労を軽減させたい方は、ぜひ実践してみてください。
脳専門のメディカルスパ「ブレインパーク」で施術を受けていただいた際も、マインドフルネス状態になり脳がスッキリするとのご感想をいただいています。
施術中もマインドフルネスの「無」の状態のなっていただくことで、疲労の改善や心身のリフレッシュがより効果的に行われます。
脳疲労を回復させたい場合は、ブレインパークもどうぞご利用ください。
(参考)
注1:科学的側面からみたマインドフルネスとその実践【後編】―脳科学研究による実態解明―|PROGRESS IN MIND
注2:現代ニューロサイエンスが解明した「直感」のメカニズム【青砥瑞人×佐宗邦威(1)】|DIAMOND online
注3:世界のエリートがやっている最高の休息法|久賀谷 亮
注4:マインドフルネスにうつ病治療の効果なし!?科学的根拠がないまま10億ドル規模の産業に|HEALTH PRESS
注5:マインドフルネスの効果と限界 低所得層のコミュニティにはリスクが残る…|Newsweek

精神科医
スポーツメンタルアドバイザー
産業医、健康スポーツ医
1990年2月28日生まれ。スマートクリニック他都内および静岡の精神科クリニックで勤務。メンタルやストレスに関する治療を得意分野とし、疲労や更年期の悩みに関して幹細胞上清液を中心とした治療を行う。精神科医として常勤する傍ら、横浜FC・北海道コンサドーレ札幌アカデミー世代のメンタルアドバイザー、レアル・マドリード・ファンデーション・フットボールアカデミーのメンタル育成の普及について積極的に取り組む。パラリンピック競技種目である視覚障がい者5人制サッカー日本代表の元メンタルアドバイザー。東邦大学医学部卒。著書「スポーツ精神科医が教える日常で活かせるスポーツメンタル」(法研)