デフォルトモードネットワーク(DMN)で脳が疲労する?瞑想法やメカニズムを解説

デフォルトモードネットワーク(DMN)とは、脳のアイドリング状態を作り出す脳内ネットワークだと言われています。つまり、車のエンジンをかけっぱなしにした時のように、脳は活動を続けていることになります。
そのため、もしデフォルトモードネットワークをコントロールできれば、脳のアイドリングをストップでき、脳疲労を軽減できると考えられます。
とはいえ、どうやってストップするのかといった疑問をお持ちの方も多いことでしょう。
そこで本記事では、脳疲労に影響するデフォルトモードネットワークを止めるための瞑想法について解説。おすすめの書籍もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
デフォルトモードネットワーク(DMN)と脳疲労の関係は?
脳内のネットワークであるデフォルトモードネットワーク(以降、DMN)は、エネルギー消費量が大きいことから、過度に活発になると脳が疲労すると言われています。
ここでは、DMNについて分かりやすく解説。脳疲労の蓄積のメカニズムについても、お伝えします。
DMNとは
DMNとは、内側前頭前野や後帯状皮質、楔前部、下頭頂小葉などで構成される脳内ネットワークのことです。無意識下の脳活動に関係していると言われており、DMNがあるからこそ、人間は創造的な活動ができるとも考えられています。
また、DMNがあることで常に脳が働き続けるため、ぼーっとしていたり、眠っていたりするときでも、人間は何かしら考えていると言われています。そのため、DMNにおける脳の活動が過度に活性化されると、脳疲労につながるのです。
DMNが過度に活性化されると脳の疲労が蓄積する
DMNは脳の中でも、エネルギーの消費割合が大きいと言われており、その割合は60~80%にも上ります。(注1)
そのため、何も考えずにぼーっとしていたり、睡眠時間をしっかりと確保したりしても、可能なDMNの活動を抑えられないと、脳疲労が回復しないことになるのです。
「休日に家でゆっくりしても、疲労がとれない」「睡眠時間を取っても朝から疲れている」といった悩みを抱えている方は、DMNが過度に活性化された状態にあるのかもしれません。
次に、DMNの活動と睡眠不足の関係について解説します。
過剰なDMN活動で睡眠不足になる理由
DMNネットワークが過剰になると、ぐるぐる思考(反芻思考)に陥ってしまうために、睡眠不足になります。ぐるぐる思考とは、過去の後悔や未来への不安といった考えても解決策を見いだせないことを、繰り返し考えることです。
たとえば、「あの時、ああしておけばよかった」「明日は、悪いことが起きはしないか」といったことを繰り返し考えることで、さらにDMNの活動が過剰になります。DMNにおける脳活動は人間の生理作用なので、自然と不安や悩みが増幅されるのは仕方のないことです。
そこで、DMNをストップさせる術を身に着けておくと、不安や悩みにとらわれて睡眠不足にならずに済むと考えられます。
脳疲労を回復させるにはDMNをストップさせる
脳疲労をストップさせる手段は、今の出来事や、現実に意識を集中することです。
たとえば、趣味に没頭しているときは過去の後悔や未来の不安を妄想していない、脳がスッキリとシンプルな状態だと言えるでしょう。誰しもが、過去に自分な好きなことに没頭した経験があるのではないでしょうか。
つまり、DMNをストップさせて脳疲労を軽減させる手段を、誰もが過去に実践済みだということになります。
しかし、自分が好きなことに没頭できる機会がない場合には、どのようにすればよいでしょうか。そのようなときは、マインドフルネス瞑想法で意識的にDMNをストップすると良いと言われています。
次に、マインドフルネス瞑想法について解説します。
マインドフルネスが脳疲労に作用するメカニズムについては、次の記事も参考にしてください。
関連記事:マインドフルネスが脳に作用するメカニズムは?|研究報告をもとに効果を解説!
すぐにできるマインドフルネス瞑想法を3つ紹介
マインドフルネスとは、瞑想などを通じて脳を休める方法を指します。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズも、脳を休息させために、瞑想を実践していたと言われています。
瞑想の方法にもいろいろな手法が存在しますが、頭に浮かぶ妄想を排除し、今の自分の感覚に意識を向けるのことがマインドフルネスの基本です。
そうすることで、DMNをストップして、不安や悩み、考え過ぎの状態から解放され、脳疲労を軽減できると考えられています。
ここでは、マインドフルネス瞑想のやり方について3つ紹介しますので、参考にしてください。
マインドフルネス瞑想の基本
マインドフルネス瞑想をする場合は、まずは次の基本形を実践するとよいでしょう。
はじめのうちは、雑念が浮かんだことに気づくまで時間がかかったり、雑念が多すぎてなかなか意識を呼吸や身体の感覚に向けられない可能性があります。
しかし、訓練を繰り返することで、徐々に瞑想の質や時間も向上してくることでしょう。まずは、2~3分程度でもよいので、実践してみはいかがでしょうか。
忙しい人にはムーブメント瞑想
ムーブメント瞑想とは、今の身体の動きに意識を向ける瞑想法です。ムーブメントという名前の通りに、動きながら行う瞑想で、日常動作の中で実践できます。
たとえば、歩くときには、膝が曲がる感覚や地面に足裏が触れる感覚に意識を向けて、身体の動きや触覚に集中します。
歩行中に行う瞑想であれば、通勤の途中で行えるため、仕事で忙しい人におすすめです。
さらに、家事が忙しい人であれば、洗濯物を畳んだり、掃除をしたりなど単調な動きを繰り返す際にも実践できます。
洗濯物に触れたときの指先の感覚や、そうじで床を拭きとる際に肘を動かすときの感覚などに意識を向けると、ムーブメント瞑想を実践できます。
ムーブメント瞑想は、忙しい人におすすめの方法なので、ぜひ実践してみてください。
食事中にできる実践可能なマインドフルイーティング
マインドフルイーティングとは、食事中に食べ物に対する味覚や臭いに意識を集中して食事を楽しむことです。
味覚や嗅覚などの感覚に意識を集中するマインドフルネスの考え方を取り入れた食事法で、脳を休息させる効果が期待できます。
食事に集中しないと、食べ物の味や香り、風味などを感じる食事の醍醐味を楽しめません。また早食いをすると、リラックスできずに内臓に負担をかけます。
食事の時間はリラックスをした方が、副交感神経が優位になり、内臓が働き消化にも好影響を与えるのです。
現代はテレビを見たり、スマホをのぞき込んだりして、食事に集中せずに物を口に運んだいる方も多いのではないでしょうか。
日頃から食事に集中できていない場合は、マインドフルネスイーティングを実践してみてください。
デジタルデトックスのためにマインドフルネスを活用
ここでは、デジタルデトックスが難しい人が、マインドフルネスを実践する意義について解説します。
デジタルデトックスとは
デジタルデトックスとは、スマホやパソコンなどのデジタル機器と距離を置いて、ストレスを軽減する取り組みです。
現代ではスマホ依存が社会問題になっており、眼精疲労や自律神経の乱れなどの健康被害も報告されています。
しかし健康に悪いからと、デジタルデトックスをしようと思っても、うまくいかない人も多いのではないでしょうか。
デジタルデトックスが成功しない理由の1つとして、SNSへの依存が考えられます。
SNSで感情をコントロールする場合も
デジタルデトックスを実践しても「どうしてもSNSを見てしまう」という悩みを抱える人もいます。
SNSに依存してしまう人は、心を静めるための手段としてSNSを活用している場合があるようです。
たとえば、自分の不安な気持ちや、イライラの感情をSNS上で吐露し、やり場のない感情をコントロールしている人もいるのではないでしょうか。
またSNS上で自己アピールをして、自分を認めてもらいたいという承認欲求を満たすためにSNSを活用している人もいるのかもしれません。
SNSで他の人とのつながりを確認したいという気持ちも、承認欲求の表れだと考えられます。
感情のコントロールをSNSに頼っている場合は、代わりの手段として、マインドフルネス瞑想を実践してみるのも1つの手段です。
マインドフルネスを実践するメリット
マインドフルネスを実践して、自分の感情に意識を向け、自分で心の乱れを鎮める訓練をするとSNSに頼らずに済む可能性があります。
たとえば、イライラしたときは、スマホを見る前に、一度ゆっくりを座り心を落ち着け、自分の感情に意識を集中してみてください。
マインドフルネスを正しく実践できていれば、イライラや承認欲求といった自分の心の状態に気づくことでしょう。
それが、感情や欲求を自分でコントロールできるきっかけになるかもしれません。
デジタルデトックスがうまくいかない場合は、マインドフルネス瞑想を実践してみてください。他にも、デジタルデトックスをする方法を知りたい方は、次の記事を参考にしてください。
関連記事:スマホ脳過労とは?脳の疲労がもたらす症状と改善方法について解説
ランニング後のすっきり感はDMNが影響?
ランニングやウォーキングをした後に、スッキリした感覚を味わった経験はないでしょうか。脳科学者の茂木健一郎氏によると、運動後のすっきり感もDMNが関係しているようです。(注1)
走っている間に、DMNの働きにより、頭が中が整理されるために頭がすっきりするとのことです。
DMNをストップさせるマインドフルネスとは逆の作用にはなりますが、運動時にはDMNの働きがプラスに働くこともあると考えられます。
また、運動時は脳からドーパミンやセロトニンといった、やる気に関わるホルモンが分泌されるとも言われています。
運動不足で脳疲労を抱えて調子が悪い方は、時間を作ってランニングやウォーキングを実践してみるのもよいのかもしれません。
DMNと脳疲労に関するおすすめ書籍
DMNや脳疲労を学ぎたい方に、オススメの書籍は「世界のエリートがやっている最高の休息法」です。本記事の内容も、この本を参考にさせて頂いています。
もっと詳しくDMNなどの脳の仕組みや、マインドフルネスについて学びたい方は、一読してみてはいかがでしょうか。
ナツという駆け出しの脳科学者と、第一人者のヨーダ、そしてナツがバイトで働くベーグル店の仲間たちが織り成す物語を通して、DMNやマインドフルネスについて詳しく語られます。
著者は日米で活躍する脳の専門家で医学博士の久賀谷亮氏。そのため、専門的な知見からも本が書かれており、脳のことについて詳しいことまで学べます。
DMNをコントロールして脳疲労を抑えよう
DMNが過度に活発になると、脳が休息できずに脳疲労が溜まる可能性があります。過度に活発になったDMNを抑えるには、現在のできごとに意識を集中することが大切。
現在に意識を向けて脳疲労を軽減さるため、マインドフルネス瞑想を実践するのもおすすめです。DMNをコントロールして脳疲労を抑え、集中力や思考力を高めたり、全身の疲労感を楽にしたりしてみてください。
なかなか取れない脳疲労による疲労感や集中力低下を解決するために、メディカルスパ「ブレインパーク」に相談してみるのもおすすめです。今回お伝えしたDMNへのアプローチとは、違った方法で脳疲労を回復へと導きます。
科学的に効果が実証された「再生医療の技術」や、これまでの経験の蓄積から編み出された「頭鍼」、脳の血流にアプローチして疲労を解除する「頭ほぐし」といった技術を駆使して、脳疲労にアプローチします。
医師が監修した最高のリラクゼーションを堪能したい方は、ぜひ「ブレインパーク」にお越しください。
(参考)
注1:世界のエリートがやっている 最高の休息法|久賀谷 亮
注2:走ると気分がすっきりするのはなぜ!? 脳科学者 茂木健一郎さん|NHK 読むらじる。

精神科医
スポーツメンタルアドバイザー
産業医、健康スポーツ医
1990年2月28日生まれ。スマートクリニック他都内および静岡の精神科クリニックで勤務。メンタルやストレスに関する治療を得意分野とし、疲労や更年期の悩みに関して幹細胞上清液を中心とした治療を行う。精神科医として常勤する傍ら、横浜FC・北海道コンサドーレ札幌アカデミー世代のメンタルアドバイザー、レアル・マドリード・ファンデーション・フットボールアカデミーのメンタル育成の普及について積極的に取り組む。パラリンピック競技種目である視覚障がい者5人制サッカー日本代表の元メンタルアドバイザー。東邦大学医学部卒。著書「スポーツ精神科医が教える日常で活かせるスポーツメンタル」(法研)